2018年10月1日
干し柿の栄養素
干し柿は身体に良いと言いますが、具体的にどういった栄養価が高いのか、効能はどのようなものなのか、皆さんはご存知ですか？今月は、干し柿の栄養素をまとめました！順番にご説明していきます。
①干し柿のエネルギー
干し柿のカロリーは100ｇあたり約276kcal、対して生柿は100gあたり約60kcalです。干し柿にしたらカロリーが高くなるの？と思われてしまうかもしれませんが、これは生に対して水分量が抜けて重量が1/４程度まで成分が凝縮されるためなので、柿1個分と干し柿1個分の炭水化物量はほとんど同じになります。
ちなみに同じドライフルーツで比較すると、りんごは315kcal（100gあたり）,イチゴは341kcal(100gあたり)です。また、代表的な主食のカロリーは、ごはんは100gで168kcal、パスタ(ゆで)は大体150kcalです。
主食と比べてみるとドライフルーツ類は少々カロリーが高めかもしれませんが、生フルーツよりも保存期間が長く、栄養が凝縮された状態で手軽に食べることができます。
②干し柿栄養成分ー食物繊維
100gあたり14.0ｇ含まれています。干し柿1個あたりの重量を30gとすると、含まれている食物繊維量は4.2gということになります。
食物繊維の摂取目標量は、1日あたり男性20g以上、女性18g以上となっていますので、干し柿を1つ食べるだけで摂取目標量の約1/5が賄える計算になります。
また、食物繊維は水に溶けないタイプ（不溶性食物繊維）と水に溶けるタイプ（水溶性食物繊維）がありますが、干し柿は水溶性食物繊維の割合が高いです。
③干し柿の栄養成分ータンニン
タンニンは、渋柿の渋み成分です。お茶や赤ワインを飲んだ時に感じる渋みも、このタンニンによるものです。タンニンは生の渋柿では水溶性なので食べると舌が渋みを感じますが、アルコール等で処理したり、時間をかけて乾燥させたりするとタンニンが不溶性に転じ、渋みを感じなくなるのです。
つまり、渋柿に含まれるタンニンは乾燥させることによって消滅した訳ではなく、渋みを感じさせなくなっただけということになります。
【どういうメカニズムでタンニンが変化しているのか？】
果実は皮を通じて呼吸をします。皮をむいて干された渋柿は、まさに呼吸ができない状態です。呼吸が出来なくなると、柿の中にアセトアルデヒド(アルコールが酸化したもの)が蓄積され、これがタンニンと結合し、水溶性のタンニンから不溶性のタンニンとなるのです。
タンニンには以下のような効能があると言われています。
◆抗酸化作用
◆肌の引き締め
◆腸内環境の調整
④干し柿の栄養成分ーβカロテン
柿の鮮やかなオレンジ色の主成分です。干し柿になるとさらに成分が濃縮され、βカロテンは1400μgと多く含まれるようになります。
βカロテンとは一体どんな成分なのでしょうか？
実はβカロテンは、体内でビタミンAに変換されるという特徴を持っています。なので、別名プロビタミンAとも呼ばれています。
他にビタミンAの働きを持つカロテノイド(=植物の色素)には、αカロテン・βカロテン・βクリプトキサンチンなど、様々な種類がありますが、中でも最も効率よくビタミンAに変換されるのがβカロテンです。体内で必要な量だけビタミンAに変換されるので、過剰摂取を防ぐなどのメリットがあります。
βカロテン・ビタミンＡには以下のような効能があるといわれています。
◆抗酸化作用
◆がん予防
◆抵抗力UP
◆目の疲れを予防
◆肌の調子を整える
⑤干し柿の栄養成分ーミネラル
栄養分は乾燥されると凝縮され、増加します。干し柿はナトリウム４ｍｇ、カリウム６７０ｍｇ、カルシウム２７ｍｇ、マグネシウム２６ｍｇ、リン６２ｍｇ、鉄０.８ｍｇ、亜鉛０.２ｍｇ、銅０.０８ｍｇ、マンガン１.４８ｍｇ等多くのミネラル分を含んでいます。
【なぜ乾燥させると栄養分が増加する？】
2016年9月号の「月刊現代農業」で、青木秀敏さんが切り干し大根を使った実験でその秘密を探りました。その結果によると、以下の理由が考えられると言います。
・乾燥させることによって、果物の細胞内の水分は減少します。体内の水分が奪われていくので、いわば果物にとっては生命の危機です。そこで、果物の細胞は自身の浸透圧を高くし水分が抜けにくくなるよう、細胞内の糖度を上げます。
要するに、乾燥による糖度の上昇は、果物の生存本能だと考えられています。
元々渋くて食べることができなかった渋柿を干すことで、美味しく、栄養価の高い干し柿を生み出した先人の知恵は素晴らしいですね！
(参考)
柿の王国—干し柿の栄養価
https://kaki-oukoku.jp/eiyouka/index2.html
